replus

RE;COIL (リコイル)メンバーのarc@dmzによる日記

電脳ネタ (1)

mixi日記で去年6月頃触れた、」…というふうにで書いたけど、mixi嫌いの人には不親切だったかも。というわけで、ここに再掲。当時からまた色々事情が動いているので、あくまでこれらが去年の時点での調べ・感想という点に注意されたい。

Microsoft Silverlight、Adobe AIR、Google Gears

デスクトップをWindowsで支配するMicrosoftが「Silverlight」でWebに進出したかと思えば、 元来Web向けの技術Flashを擁するAdobeは発展形のApollo改め「Adobe Integrated Runtime」でデスクトップに逆進出。 そして、検索エンジンやAjaxをフル活用したサーバありきのWebアプリ開発で一気に巨大企業へ成長したGoogleは、「Google Desktop」に続きサーバがなくてもアプリを使える技術「Google Gears」を一般公開。

デスクトップとWeb、インターネットとローカル環境の垣根を越える様々な技術が一斉に出揃ってきた今は、とても面白い時代だと思います。

細かいところに目を向ければ、DBMS(データベース管理システム)の一種でありながら、サーバがクライアントソフトウェアに組み込まれたかたち を取る(狭義のサーバを必要としない)「sqlite」がSafari 3などによってローカル環境でフル活用されるようになってきたこともその支流の一つとして捉えられそうです。

PlaceEngine

Webがらみの技術といえば、無線電波の状況から自分がどこにいるか判断できる「PlaceEngine」が公開されています。

GPSが衛星、はるかかなた上空から位置をトップダウンに測定する技術なのに比して、PlaceEngineは近くの電波状況を積み上げて現状を把握するボトムアップの測定法です。 現在地を把握する情報源となりうるほど、どこでも電波が飛び交う時代になりました。

Apple iPhone、Microsoft Surface、TED2006

そもそもマウスとキーボードなんて細いチャネルでコンピュータを操ろうとしている点に、今のユーザインターフェースの無理があると思うわけです。 とくにマウスは一つの場所しかポイントできないけれど、人間の手は普通二本なんだから、ポイントできる場所が複数あれば(Multi-touchと言います)、もっと優れたユーザインターフェースが実現できるのは自明でありましょう。

そこで、Mac OS Xを積んだiPhoneは指2本で直感的な操作ができるようになってるし、(今秋発売) Microsoftが開発しているSurfaceは机表面が自由に触って操作できるディスプレイになってるし、(今夏お披露目) 去年2月のTED(Technology, Entertainment, Design)2006の時点ですでにそういうプレゼンが行われていたりするのです。

ユーザインターフェースは一番気になる分野なんだけど、そういう研究が「研究」としてまだまだ成立していない感じがちょっと残念ではあります。

知能ロボット学研究室、robocasa.com、miuro.com

日本のロボット産業が、産業面でも文化面でも世界のトップを行っていることは疑いようがないわけですが、そろそろロボットが傍に「いる」(≠ある)生活が当たり前に近づいてくる頃なのかもしれません。

阪大の変態教授(褒め言葉)は娘に似せたロボットを作るし、ロボットと暮らす生活をテーマにしたWebサイトや製品が出てきたし、鉄腕アトムは(まだ)いませんが、昔なら夢だった生活が今や現実となりつつあるのは確かでしょう。

複合現実と強化/拡張現実、拡張現実感プログラミング

VR(Virtual Reality/仮想現実)は、まったく別の現実が目の前に広がる技術を指しますが、本当に面白いのは、今ここにある現実が、別のリアリティと組み合わ さったり拡張されて現出する技術、MR(Mixed Reality)やAR(Augumented Reality)ではないでしょうか。

例えば、防犯カメラをハッキングして顔にアイコンを被せて匿名化したり、信号機の映像をハッキングして青信号を赤に変えたり、「現実」と「計算された現実」が混じる世界では様々な事件が起きそうです。(元ネタが分かる人は…ご愁傷様)

SF的に詳しい話は一つ目のURLに譲ります。

二つ目のURLでは、そんなARを現在の技術水準、それも家庭用PCの環境でけっこう簡単に実現できてしまうことが分かります。

Webカメラを使ってビデオチャットする人がどれくらいいるのか知りませんが、Skypeなどを使えばタダでずーっと話し続けられるビデオチャットのサービスは、確実に利用者が増えてきていることと思います。 そこで使われるWebカメラは、ある意味コンピュータの目です。 Webカメラ→コンピュータ(全画面表示)→ヘッドマウントディスプレイ、という接続を作れば、Webカメラで見ている範囲がヘッドマウントディスプレイに表示され、「視野」がWebカメラの撮影範囲と同じ意味を持つようになるのです。

この状態を作り出した上で、Webカメラの撮影した画をリアルタイムでハッキングすれば、その人が見て現実だと思っている視野をいじることができます。 URLでは、3Dでモデリングされた、あるはずがないものを映してしまう例が書いてあります。視野が傾けばそれに応じてモデリングデータも角度と位置を変えてレンダリングされるため、比較的自然に視野がハッキングされる感じを味わえるはずです。

メディアとしてのニコニコ動画

「字幕コメント」が持つ力

本レポートでは、これまでに登場したマスメディアを4種類に大別し、それぞれの特徴を見て独自のメディア俯瞰図を作成したのち、「新しいメディア」として注目を集めるニコニコ動画が「いかに」新しいのか分析・考察する。

というわけで、以前、某知り合いのレポートを手伝ったときの原稿をそのまま載せてみる。そのうちちょっとずつ手直ししていく予定。初出はmixi日記(07/08/31)。もある。

ニコニコ動画以前のメディア分類

メディア分類─活字メディア・映像メディア・ネットメディア・ネット映像メディア

メディアとしてのニコニコ動画について述べる前に、これまでに登場してきたメディアを整理しておきたい。メディア論におけるメディアとは、基本的にマスメディア─不特定多数の受け手を対象に情報を発信する媒体を指す。マスメディアという場には、情報と、情報の送信者、そして受信者が登場する。とくに本レポートでは、メディアの発信者・受信者の特徴による分類2種×情報の特徴による分類2種=4種に、マスメディアを大別する。

まず、最古参の「活字メディア」は、少数の執筆者が文字により情報を記し、発信する。投書欄などがあり、受信者からのフィードバックが情報に含まれることもあるが、発信が断続的なので、リアルタイムで情報の編集に受信者が参画することはない。

次に「映像メディア」は、活字メディアよりも発信側の人的コストがかかるため、発信に関わる人間は比較的多いが、あくまで受信者から見た発信者像は(リポーターなど)特定・少数である。また、映像は文字と異なり、情報に時間軸がある。文章は読み手が自分で読むスピードを調整できるが、映像は流す速度を発信者側が決める。メディアとして正しく機能するためには、受け手が多量の情報で溢れないようにする必要があるが、そのための工夫は完全に発信者側に委ねられている。なお、地上波デジタル放送が開始され、その双方向性が盛んに宣伝されているが、視聴者が自由に情報を送信するためにはネットへの接続が必須であり、地上波デジタル放送の基本的な機能では視聴内容についていくつかの選択肢が与えられるだけである。双方の情報の送受信がほぼ対等に行われることを本来の双方向と捉えるならば、地上波デジタル放送は映像メディアに分類される。ネットへの接続をセットにした、いわゆるネットTVは、後述のネット映像メディアに分類できる。

「ネットメディア」は、インターネットを用いたメディアである。ネットでは誰もが自由に情報を発信でき、匿名性もある程度確保されるため、発信者が匿名かつ多数である。発信者が特定できる新聞やテレビなどと違い、発信者が負う責任が小さい。受信者は送信者に対して容易にコメントを返すことができ、多くの場合、コメントは情報の一部として改めて発信される。情報の編集に、受信者がリアルタイムで参画できるのである。また、発信者と受信者は同じ方法(主にTCP/IPのHTTP)でネットに接続しているため、技術的には、発信者ができることは受信者にもできる。発信者と受信者が、はじめて技術的に近い位置に立てるようになったのがネットメディアである。2000年代前半までのネットメディアは、ナローバンドが主流だったこともあり、文字や静止画主体の情報を扱うものが多かった。

ここで、2000年代後半以降、ブロードバンドの普及に伴い、動画を主に扱うようになったネットメディアをとくに「ネット映像メディア」と呼ぶことにする。ふつうのネットメディア(以降、単に「ネットメディア」)をネット上の活字メディアとするなら、ネット映像メディアはネット上の映像メディアである。ただし、ネット映像メディアは広義のネットメディアの一部である。そのため、活字メディア(本など)とは完全に異なる媒体(テレビなど)として存在する映像メディアよりも、断続的に発せられる文字情報との親和性が高い。例えばYouTubeは、動画に残されたコメントや、動画の説明文を読むことで、動画自体が与える情報を補足できる。また、テレビなどと違い自分で巻き戻したり早送りすることが容易なので、発信者側の意図からより自由な状態で情報を視聴できる。

ニコニコ動画とは

ググれ。

ニコニコ動画の特徴

これまでのメディアを俯瞰してみると、ネット映像メディアの中でニコニコ動画が持つ特異性が浮かび上がってくる。とくに、他のネット映像メディアにはない、既存のメディアから引き継いだ特長に着目すると下記2点が挙げられる。

ニコニコ動画が他メディアから引き継いだ特長

映像メディアから受け継いだ特長──「字幕による補足」という手法

映像は、活字と比較して受け手が処理すべき情報量が多く、情報再生の時間軸が発信者によって規定されている。巻き戻しや早送りが自由にできても、やはり受け手の情報処理を手助けする機構があったほうが親切である。そのために、映像メディアは「字幕」を発明した。知ってのとおり、実際の動画と音声に加え、その映像が持つ意味を端的に示す文字を、動画に重ねて表示するのが字幕である。

もちろんこの字幕は、他のネット映像メディアでも用いられている。しかしながらどれも動画内にはじめから字幕を埋め込むもので、はじめから完成された情報を放映する映像メディアの手法をそのままコピーしたものである。例えばインターネットテレビを標榜するメディア(GyaO)では番組制作者側が字幕を入れることがあるが、これはまさにインターネットにテレビの考えをそのまま持ち込んでおり、動画に後から自由に字幕を付与できるニコニコ動画の機能とは区別される。

つまり、ニコニコ動画では、配信する情報を受信者が編集できるネットメディアの特徴を、字幕という手法と結びつけて利用しているのだ。

この点は、さらに大きな意味を持っている。字幕は元来、情報の送信者側が意図して付けているものだった。このため、完成された情報にはどこか「視聴者に喜んでもらおうという意図」からくる「うさんくささ」「いかがわしさ」、作り込まれた印象がついて回る。しかし、ニコニコ動画の字幕の付け手は基本的に情報の受信者である。字幕の付け手が匿名の多数なので、特定の字幕が強い意志を持って受信者に働きかけてくることはない。既存の映像メディアへの不信感、裏を返せば、最初から最後まで特定の意図に基づいて完成されたわけではない情報が配信されているという安心感がニコニコ動画の人気を強固なものにしている。

安心感は、それが裏切られたときに大いなる怒りを呼び起こす。一例として、07年8月下旬、動画の送信者が自身の動画にコメントを集中的に残す「自作自演(以下、自演)」が発覚し、非難された件が挙げられる。(詳細は略)最終的には、運営側が、動画の送信者が自演しているか分からなくする「字幕の匿名化」を施して問題は決着したように見える。

なお、ニコニコ動画は、定められた料金を払うと、いくつか追加の機能を利用できる。追加機能に特別な色の字幕の使用が含まれているところからも、字幕が受信者に対して持ちうる影響力の大きさが伺える。多くの字幕の中で、特別な色の字幕はそれだけである種の個性となり、受信者に対するアピールを果たす。

ネットメディアから受け継いだ特徴──「リアルタイムな情報の更新」という技術的可能性

前項でも、ニコニコ動画が字幕にネットメディアの特徴を結びつけた旨を解説したが、ニコニコ動画はネットメディアの別の側面もうまく利用している。
インターネット用語に、「祭り」という言葉がある。
あとはこのへん読みゃいい。

活字メディアから受け継ぎつつある特徴──「手軽に視聴できるプラットフォーム」

活字メディアが苦境に立っていると言われて久しいが、それでも活字メディアが生き残っている要因の一つは恐らく、紙媒体の扱いやすさだろう。電源コードも重い筐体もなく、明かりさえあれば手に持って読める手軽さは他に類を見ない。

ところが、最近手軽さを持ち合わせた新しいメディアが急成長している。携帯電話(あるいは携帯型ゲーム機)である。
ニコニコ動画にもモバイル版ができたから、今後が楽しみ。

まとめ

ニコニコ動画は、とても素敵なものである。


タグ「メディア」を含む記事を全2件中1件目から計2件表示